『二週間後まで独身ならば、樺太支社への転属を命ずる 社長』
僕は三崎佳太。24歳独身。彼女は、いない。
僕の勤めているルクーゾカンパニーには、なんと樺太にも支社がある。ゆくゆく千島列島全域を所有したい現社長のにとって、樺太支社は重要な支社なのだ。ちなみに前社長の"ボンズ・ガッチョ"は世界的にも有名な社長で、社長にしたい人物ナンバーワンの座を30年間も保持していた人物なのだ。その記録が途絶えた理由は、社長が退職なされたからであり、決して人望が落ちたからなのではない。
それに比べて現社長"クレーヴ・ドカンチョ"はお世辞にも良い社長とは言えない。ただ気前がよく、気がつけば給与+何十万と毎月ボーナスを払ってくれるような人なのだ。だからこの会社に残っている社員も多い。
俺もそのうちの一人だ。
ちなみに創業者のルクーゾは200年前の人物にもかかわらず、未だにその人気は衰えていない。ルックス、経済力、包容力、愛情、その他。どれをとっても、男性の見本になるような人物だった。
話を戻そう。
その現社長ドカンチョ氏の考えにより、俺は二週間以内に結婚しないと樺太へ飛ばされてしまうのだ。樺太と言えば、強制労働キャンプの地として有名で、極寒の寒さに加え、物資の少なさ、経済状況などが非常に悪い土地として有名なのである。そこに飛ばされでもしたら、社員という立場はあれど、労働キャンプに付き合わされるに決まってる。俺は危険思想者でもないのに!!
ついに結婚期限の三日前になった。
何もしなかったわけじゃない。結婚相談所へ行って相手を探してみたり、出会い系サイトと言うもので結婚を前提として交際を申し込んでもみた。が、即結婚とはいかず、失敗の連続だった。
もう自棄になり、独りで居酒屋で飲んでた時だった。
「あれ、佳太じゃん」
幼馴染の春日美紗。彼女は今美容師として働いていて、地元の美容室では有名な部類に入る人物だ。
「美紗・・・も、独り?」
彼女も今日は独りらしい。なんでも仕事でちょっとミスがあったらしく、それを客にどやされたそうだ。自分を励ます為に、居酒屋へ足を運んだのだとか。
「佳太は、何で独りでいんの?」
全部話した。あと三日で樺太へ飛ばされる事。労働キャンプ強制参加の可能性がある事。そして、きっと帰ってこれないだろうという事。
「だからさ、これが美紗と会えるの最後かもしれないんだ」残っているビールを一気に飲み干す。「笑っちゃうよね」
涙が出た。もう幼馴染の彼女に会えないのだろうと思うと。
悔しくて、何も言えなかったと思って。
「その話ってさ、結婚すれば行かずに済むんでしょ?」
美紗が訊ねる。
「そうだよ。未婚の24歳~25歳が対象だから」
涙を拭く。今更だけど、やっぱり泣き顔は見られたくないな。
「それじゃさ、私でいいじゃん?」
顔を赤めて、彼女が。
「もう友達としても十分付き合ってるしさ。って言うか、兄弟みたいなもんじゃん、私達」彼女もビールを飲み干す。「だからさ。結婚相手」
間を置いて。「私でいいじゃん」
「い、いいの・・・?」
酔いが一気に醒めた感じ。
プロポーズ?幼馴染の彼女、から?
「佳太ってさ、好きだったんでしょ私の事。なら問題ないじゃん」
否定は、できない。
「問題あるよ!美紗はいいの?俺なんかで?」
俺一人の問題なのだから、美紗まで巻き込みたくない。
「佳太に樺太行かれるくらいなら、結婚したほうがましだよ」
そう言ってくれた美紗に感謝し、再び涙した。
二人で居酒屋を出た後、話をした。
明日二人で休みを取って婚姻届を出しに行こうと。
お互い、恋人として付き合った事はないけど、きっと大丈夫だろうと。
お互い、ずっと好きだったのだと。
その後、俺はあの会社を辞め、別の会社に勤めている。
結婚した後になったが、指輪をプレゼントした。遅れながらのプロポーズ・・・もした。俺と結婚してくれてありがとう。
俺の人生において、彼女の存在ほど大きなものはない。
生まれて最初の友達であり、これから死ぬまでのパートナー。
そんな彼女に出会えて、本当に幸せだ。
ありがとう。
全部見てくれて人ありがとっすよ!!
最後って言うか樺太支社ってあたりかなーりゴタゴタだけど、気にしないでくださいね!!
書いた後に読み直し修正してないので、
誤字脱字は気にしない方向で!!
PR